寒くなってきました。この季節になると「ノロウイルス」による食中毒に注意で、食べ物、人から人への感染に気を付けなければなりません。基本は手洗いと加熱(85~90℃、90秒間以上)、そして消毒(次亜塩素酸ナトリウム200ppm)です。
そして、今回は、寒くても低温に強い「リステリア・モノサイトゲネス(LM)」について、食品安全委員会の資料をもとに触れたいと思います。
LMは、他の多くの食中毒原因菌と異なり、食品を4℃以下の冷蔵庫で保存していても、一部でも汚染されていれば、菌が増殖することがあります。
食中毒の一種であるリステリア症とは、LMに汚染された食品を介して感染します。
健康な人であれば、汚染菌数が少ない場合、感染しても症状が出ないことが多いのですが、高齢者を含め免疫力の低下している人では発症のリスクが高まります。発症すると、初期にはインフルエンザのような発熱や嘔吐、頭痛などの症状、重症になると髄膜炎や敗血症を引き起こし、意識障害やけいれんが起こることもあります。また、妊娠中の人は感染しやすく、早産や流産の原因になったり、胎児に影響が出たりする例も見られます。
日本では、欧米に比べリステリア症の発症や、食品のリステリア汚染は少ないといわれてきました。 しかし、2012 年の厚生労働省の調査 (JANIS =院内感染対策サーベイランス)では、日本での年間当たりの患者数は約200人と推定されており、実際には欧米と同様に、特に65 歳以上の高齢者を中心にリステリア症が発生していることがわかってきています。
食品安全委員会の評価によると、調理済み食品(RTE) 食品において喫食時点で汚染菌数が 10,000CFU/ g 以下の場合、免疫力が低下していない健康な人であれば、発症リスクは極めて低いレベルにあると考えられました。推定患者数が200人であることを踏まえると、この汚染菌数を超えて著しくLMが増殖した食品の喫食により、患者が発生していると考えられました。よって、非常に高い菌数で汚染された食品の発生比率を抑えることが必要と考えられました。
(*RTE 食品 :消費者が購入後に加熱調理をしないで食べる食品(Ready-to-eat foods)のこと。非加熱喫食食品とも呼ばれる。チーズ、燻製品、サラダ、 生ハムなど。)
LM は低温で増殖可能なことに加え、環境中に広く存在しています。 よって、RTE 食品中のLM 汚染率を下げるため、製造環境での対策としての一般的衛生管理やその効果の検証のための製造環境中のモニタリングを行うことが重要です。
LM以外にもHACCPも含めた「予防的な対策」と環境モニタリングも含めた「検証」で「PDCA」を回していき、食中毒を発生しないよう支援していきたいと思います。