「食品用器具・容器包装」のポジティブリスト制度

平成30年6月13日に「食品衛生法等の一部を改正する法律」が公布され久しいですが、そのうちの一つ「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」(食品用器具と容器包装について、安全性を評価した物質のみを使用可能とするポジティブリスト制度)が、経過措置期間である2025年(令和7年)5月31日で終了しました。 

.ポジティブリスト制度とは?

 ポジティブリスト制度とは、食品用器具や容器包装の安全性を評価し、使用可能な物質・量などの条件をまとめた一覧表(ポジティブリスト)を作成し運用する制度です。そのため、ポジティブリストに記載の無い食品用器具や容器包装の使用は、原則禁止となります。

食品と接触する可能性のある食品用器具や容器包装を厳格に管理するため、食品の安全性をより高める事が期待されています。

食品衛生法の改正前は、ネガティブリスト制度のみでした。この方式では、禁止されている材料や物質をリスト化し、それ以外を使用する制度でしたが、新素材が続々と開発されている現代の実情にはそぐわない状況でした。

.ポジティブリストの対象?

 ポジティブリスト制度の対象となる材質は、食品衛生法施行令 第1条より「合成樹脂」と定められました。そのため、合成樹脂を使用した器具・容器包装が対象となります。

合成樹脂は、ペットボトルやラップ、使い捨て容器、紙パックや缶詰内側のコーティングと幅広く使用されているため、漏れなく確認する必要が求められます。牛乳パックのように、外側が紙であっても食品接触面に合成樹脂製のシートが貼られている場合はポジティブリスト制度の対象になります。

(1)食品用器具

 飲食器、割ぽう具その他食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列、授受、摂取に供され、かつ、食品または添加物に直接接触する機械、器具その他の物をいう。

ただし、農業及び水産業における食品の採取の用に供される機械、器具その他の物は、これを含まない。

  例:コップ、茶わん、はし、スプーン、包丁、まな板、製造機械類、運搬具など

(2)容器包装

 食品又は添加物を入れ、または包んでいる物で、食品または添加物を授受する場合そのまま引き渡すものをいう。

  例:箱、袋、包装紙など

(3)対象とならない物質

 合成樹脂には、熱可塑性を持たない弾性体であるゴムは含まれません。また、金属などの無機物や紙、木製など、天然物由来の器具や容器包装も対象となりません。

ただし、紙容器や金属缶であっても、容器内側に合成樹脂のラミネートでコーティングされている部分はポジティブリストの対象となります。  

.事業者が求められている対応とは?

 ポジティブリスト制度を対応するにあたり、事業者が求められているものがあります。その具体的な主な事項は、下記の3つとなります。

(1)製造管理の遵守

 定められた基準に従い、適切な製造管理を遵守する必要があります。一般衛生管理(第1項)と製造管理(第2項)それぞれの基準があるため注意してください。

(2)情報の伝達

 製造から流通までの過程において複数の事業者が関わります。そのため、ポジティブリストに適合している旨を説明する義務が発生します。

 例:営業者間の契約締結時における仕様書、入荷時の品質保証書、業界団体の確認証明書など

. ポジティブリスト制度のメリットとは?

 対応が必須となるポジティブリスト制度を求められる企業への負担は小さくありません。ですが、ポジティブリスト制度にはメリットもしっかりとあります。

化学的に検証された物のみを使用するため、食品品質の安全性が向上し、信頼性の高い製品を提供でき、最新の情報に基づきリストが更新されることから、安全性の評価等のプロセスを効率化できるようにもなり、製品リコールなどのリスク低減も期待できます。

また、ポジティブリスト制度を導入している諸外国も増えていることから、グローバル展開への対応が容易となり、海外顧客とのトラブルも未然に防げるようになります。
  

.経過措置と罰則

 ポジティブリスト制度は、2025年(令和7年)5月31日までが経過措置期間とされています。

施行前に製造されている器具・容器包装と同様のものは、経過措置期間中は引き続き製造が可能とされていました。

ただし、情報伝達などの義務は同様に課されるため、記録や保存が義務づけられています。経過措置期間を過ぎれば、ポジティブリストに収載されていない物質は使用できなくなるため、注意が必要となります。
(経過措置期間中に製造されたものは使用可能)

 また、ポジティブリスト制度には罰則が存在します。食品衛生法 第83条より、ポジティブリストの規定に違反した場合、「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処する旨が定められています。
                                          以上